製造業DXの目的を「省人化」だけにしないためのKPI設計

2026-08-04

製造業DXの目的を「省人化」だけにしないためのKPI設計

DXの評価を「何人減らせたか」だけにすると、入力負担の増加、品質情報の見落とし、改善活動の停滞を捉えられません。中小製造業では、削減時間を利益へ直結させるのが難しい場合もあります。そこで、品質、納期、判断速度、定着を同時に確認します。

工場の生産、品質、納期、作業負荷を複数の計器で確認する管理者
画像:AI生成イメージ

KPIは目的から逆算する

最初に「何を良くしたいか」を一文で決めます。たとえば「日報の作成時間を減らす」ではなく、「前日の異常を翌朝会議までに把握し、再発防止へつなげる」とします。前者は作業効率、後者は判断と品質まで含む目的です。

目的に対して、結果指標と先行指標を組み合わせます。結果指標は最終的な成果、先行指標は成果へ向かう途中の行動や状態です。

製造業DXで使う5つの観点

観点結果指標の例先行指標の例
生産性1件あたり処理時間、間接工数自動処理率、二重入力件数
品質不良率、手戻り件数異常記録率、未入力項目数
納期納期遵守率、回答リードタイム停滞案件数、承認待ち時間
判断問題発生から把握までの時間データ更新時刻、閲覧率
定着継続利用率、廃止できた旧帳票数入力完了率、問い合わせ件数

一つの施策にKPIを詰め込みすぎないよう、主要KPIを1つ、補助KPIを2つ程度に絞ります。

計算例

作業日報のデジタル化を例にします。

  • 月間日報件数:400件
  • 導入前の記入・転記時間:1件8分
  • 導入後:1件5分
  • 入力完了率:導入前85%、導入後96%
  • 異常報告の平均把握時間:翌営業日10時から当日17時へ短縮

月間削減時間は (8分 - 5分) × 400件 ÷ 60 = 20時間 です。ただし、これだけで成功とは判断しません。入力完了率と異常把握時間も同時に確認し、品質情報が欠けていないかを見ます。

測定条件を固定する

導入前後で対象者、対象工程、繁閑、集計期間が違うと比較できません。少なくとも次を台帳に残します。

  • 指標名と計算式
  • データの出所と責任者
  • 測定頻度
  • 基準値、目標値、警戒値
  • 比較する工程・製品・期間
  • 数値が悪化した際の確認担当

チェックリスト

  • [ ] KPIが経営課題と現場課題の両方につながっている
  • [ ] 結果指標と先行指標を一つ以上組み合わせた
  • [ ] 計算式とデータ元を明記した
  • [ ] 導入前の基準値を同じ条件で測った
  • [ ] 現場が入力できる量に絞った
  • [ ] 数値の改善が安全・品質を損なわないか確認した
  • [ ] 月次または週次の見直し担当を決めた

KPIは監視のためではなく、改善すべき場所を共通言語にするためのものです。製造業DX支援では現状計測から小規模検証まで設計します。自社指標を整理したい場合はお問い合わせください。

参考資料

  • IPA「DX推進指標」 https://dx.ipa.go.jp/tools/dxpi
  • IPA「製造分野DX度チェック」 https://dx.ipa.go.jp/tools/dx-mfg-check
  • 中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/

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